2023年03月01日

    少子化で部活は地域移行に

     市中部地域で活動している「はしまなごみスポーツクラブ」は、竹鼻中学校運動部の指導を令和3年度から行っています。同スポーツクラブに、運動部員の85%が加入。専門的な指導を休日に受け、技能向上に努めています。その様子は、全国先進事例としてNHK全国放送でも採り上げられました。

     同スポーツクラブの指導に対するアンケートでは、生徒の83%、保護者の62%が満足していると回答。学校運動部顧問の教員では、回答者全員が満足していると答えました。

     我が国では明治時代から、学校でスポーツ活動に親しむ慣習がありました。それが大きく発展したのは、第二次世界大戦後です。学校の課外活動を、民主主義の理想と結合。授業として、スポーツや文化・芸術を教えるのではなく、自主的に興味のある分野を部活動で習得するという仕組みが作られました。

     中学校体育連盟は全国大会を主催。勝つための技能向上に専念する活動が、過熱化していきました。しかし現場では、専門的な指導の知見を有する教員ばかりではありません。指導者不足を補うため、1970年代には、部活動の地域移行が議論され始めました。当時は、部活動の「社会体育化」と呼ばれましたが、構想は中途でとん挫しました。

     近年、部活動の地域移行議論が再燃。その主因は少子化の進行と、教員の働き方改革にあります。2021年度の日本中学校体育連盟の調査では、全国で複数の学校による合同チームが、19競技1793チームありました。2001年度に比べ、6.7倍の急激な増加でした。

     中学校軟式野球部の部員数に関する将来推計では、2018年の1校当たり19.9人が、30年後には3.5人に減少してしまいます。合同チームを作り、対外試合に臨むためには、4校の連携が必要です。紅白戦も、6校が集まらないと行うことができなくなります。移動時間を考えると、部活の継続すら危うくなるのです。

     教育基本法には、

    1. 幅広い知識と教養
    2. 豊かな情操と道徳心
    3. 健やかな身体の発達
    が、目標に挙げられています。このままでは、身体の発達を支えてきた部活が衰退の一途をたどり、人材育成の土台が揺るぎかねません。

     竹鼻中学校がいち早く、スポーツ部活動を、地域スポーツクラブに移行したことは英断に値すると思います。専門的な指導による技能向上をはじめ、教員の超過勤務の月平均13.3時間の削減等は大きな成果です。

     今後は、なごみスポーツクラブと連携し、県・市スポーツ協会、近隣大学、民間スポーツクラブ等と協議体制を整え、指導レベルの向上を進めていただくこと。学校顧問、クラブ指導者、保護者との連絡システムも強化し、生徒たちへの心理面のサポート充実にも努めていただきたいと思います。