2023年11月10日

    羽島市民病院の役割

    二次救急医療を担う病院 回復期の地域包括ケア病棟も開設

     岐阜県は、将来あるべき医療提供体制を示す広域的な指針となる「岐阜県地域医療構想」を策定しています。この構想の中で羽島市民病院は、岐阜圏域の中で地理的に必須な二次救急医療、急性期医療を担う病院として位置づけられています。また、羽島市民病院は地域に不足している回復期機能を担うため、県内の自治体病院に先駆けて地域包括ケア病棟を開設・運営しているほか、診療所を中心に行われる在宅医療を支える在宅療養後方支援病院として機能するなど、地域医療において重要な役割を担っています。

     なお、新型コロナウイルス感染症への対応では、感染拡大期に簡易診察室を病院の敷地内に新設し、発熱外来を開設しました。また、入院医療では1フロアを専用病棟として確保し、対応にあたっています。

     羽島市民病院の病床数や診療科目など、病院の概要はこちらからご確認ください。

     

    医療圏における位置づけ・役割の違い

     岐阜圏域は、岐阜市、羽島市、各務原市、山県市、瑞穂市、本巣市、岐南町、笠松町、北方町の6市3町で構成されています。岐阜圏域の中で、羽島市民病院は二次救急(手術や入院が必要な患者に対応)を提供する医療機関であり、三次救急(生命に関わる重症患者に対応)は岐阜大学医学部附属病院と岐阜県総合医療センターが提供しています。

     病院ごとに、属する医療圏における位置づけの違いや、立地、医療需要のバックグラウンドとなる地域人口の違いから、おのずと提供できる診療規模や診療内容に差異が生じます。

     羽島市民病院は、岐阜圏域で位置づけられた役割を果たしつつ、病病連携や病診連携を進めることにより、地域全体として提供できる医療の確保に寄与していくこととしています。

     

    岐阜圏域の方向性(岐阜県地域医療構想より抜粋)

    急性期医療 (中心的役割)岐阜大学医学部附属病院、県総合医療センター、岐阜市民病院、松波総合病院
    (地理的要因)羽島市民病院(羽島市)、東海中央病院(各務原市)、岐北厚生病院(山県市)
    特定分野 岐阜赤十字病院(災害拠点・感染症)、長良医療センター(周産期)、村上記念病院(脳卒中)、岐阜ハートセンター(心疾患)
    回復期中心にシフト 上記以外の病院
    その他 岐阜大学医学部附属病院、県総合医療センター、岐阜市民病院、松波総合病院において、病院間の連携等について研究、検討

    羽島市民病院の運営形態

     羽島市民病院は、「地方公営企業法の一部適用」の形態で運営される地方公営企業です。羽島市が開設・経営の責任主体であり、羽島市長は当該病院を統括し、代表します。病院長は、開設者である羽島市長が任命し、当該病院の管理・運営について責任を持つ者で、医師に限定されています。

     地方公共団体が管理・運営する病院の形態について、次のとおり簡単にご紹介します。

     

    運営形態の種類

     地方自治体が設置する病院の形態は、地方公営企業、独立行政法人、指定管理者の3つです。

    地方公営企業とは

     地方公営企業とは、自治体が直接経営する企業のことです。原則として給料などの経費をその事業の収入で賄います。地方公営企業は、地方公営企業法により「組織」「財務」「職員の身分」「経営の根本基準」が定められています。

    一部適用と全部適用

     地方公共団体が経営する企業のうち、地方公営企業法で定められた水道事業などに、同法の「全部」の規定が適用されます。また、病院事業については財務(予算・決算・契約等)に関する部分のみ適用することとされています。これを、地方公営企業法の一部適用といいます。

     地方公営企業法を設置の根拠とする全国の自治体病院のうち、半数近くが地方公営企業法の一部を適用した形態で管理・運営されています。

     地方公営企業法の「全部適用」と「一部適用」の主な違いは、次のとおりです。

     

    一部適用と全部適用の違い

    項目 一部適用(羽島市民病院) 全部適用
    根拠法令 地方公営企業法(財務のみ) 地方公営企業法(全部)
    開設者 地方公共団体 地方公共団体
    職員の任免 市長 市長が任命する管理者
    職員の身分 地方公務員 地方公務員
    羽島市の一般会計からの繰り入れ 可能 可能
    予算・決算の作成 市長(羽島市では病院長に委任) 市長が任命する管理者
    予算・決算の議会への提出 市長 市長
    予算・決算の認定 市議会の議決が必要 市議会の議決が必要
    職員の身分 地方公務員 地方公務員

     前述のとおり、羽島市民病院は「地方公営企業法の一部適用」の形態で運営しています。

     「一部適用」と「全部適用」を比較すると、それぞれの形態ごとにメリット・デメリットがあります。例えば、「全部適用」は意思形成のスピードが速くなることがメリットと言われていますが、一方では総務管理費の増加など、デメリットとなる点もあります。

     

    独立行政法人と指定管理者

     独立行政法人による経営形態は、地方公共団体が独立行政法人を設立し、その法人に病院の経営を行わせる制度です。指定管理者による経営形態は、地方公共団体が指定する法人等に公の施設(病院)の管理を行わせる制度です。

    羽島市民病院の経営状況

     新型コロナウイルス感染症により、近年は多くの公立病院が収益的収支に影響を受け、経営状況が悪化しています。羽島市民病院も例外ではなく、受診控えやコロナ専用病床の運用による稼働病床の減少のほか、光熱費の増加や電子カルテ更新に係る費用など、収益的収支の算定においてはマイナスの要因が多くなっています。

    令和3年度 経営の健全性・効率性の指標をクリア

     このような状況の中で、羽島市民病院は令和3年度の医業収支比率(医業収益/医業費用×100)が79.2%となり令和2年度から1.7%の改善、入院患者数は令和3年度が57,168人と令和2年度から1,366人の増加、入院収益は1億6700万円増加しました。その結果、令和3年度の純損益はマイナスになったものの、病院経営の健全性・効率性を示す経常収支比率(経常収益/経常費用×100)は100.1%となりました。

     経常収支比率は、医業費用、医業外費用に対する医業収益、医業外収益の割合を示し、当該指標の数値が100%以上となっている場合、単年度の収支が黒字であることを示しています。

     総務省のホームページで、全国の公立病院の事業決算状況・病院経営分析比較表が公開されています。ご参照ください。

    羽島市からの繰入金 財政安定化対策による削減

     羽島市では、令和2年度から財政の「安定化対策」を実施してきました。

     歳出削減の対策のうち、「市民病院への補てん削減」も実施しており、令和元年度は市の一般会計(当初予算)から市民病院事業会計へ約7億5000万円を補てんしましたが、令和2年度の補てんは約7億円(国からの新型コロナ関連補助金等を除く)とし、以降、削減を維持しています。

     

    経営形態の変更が収益収支に与える影響

     羽島市議会の本会議で、羽島市民病院の経営を改善するために経営形態を「地方公営企業法の全部適用」に変更してはどうかという一般質問がありました。

     羽島市は、前述の経営形態ごとのメリット・デメリットを勘案したうえで、現状どおり「地方公営企業法の一部適用」の形態で羽島市民病院を管理・運営していくと答弁しています。

     経営形態を見直した公立病院の経営状況の推移について、総務省が平成22年度から令和元年度までの経常収支比率の推移を公表していますが、下表のとおり全部適用がマイナス2.6%、独立行政法人がマイナス5.4%、指定管理者がマイナス1.3%となっています。

     このように、経営形態を「地方公営企業法の全部適用」をはじめとした形態に移行しても、収益収支が好転しているわけではありません。

    経営形態別の経常収支比率の推移

    経営形態 平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 平成26年 平成27年 平成28年 平成29年 平成30年 令和元年 平成22年と令和元年の比較
    全部適用 100.4 100.6 100.7 99.4 99.1 98.8 97.8 98.1 98.4 97.8 -2.6
    一部適用 99.8 99.8 99.8 99.3 99.0 98.5 98.0 97.8 97.8 97.6 -2.2
    独立行政法人 105.1 103.4 104.2 102.7 100.5 100.1 100.2 100.5 100.6 99.7 -5.4
    指定管理者 100.1 99.9 98.2 97.5 99.1 98.2 98.4 98.7 99.3 98.8 -1.3

    医師の確保

     厚生労働省では、「医師・歯科医師・薬剤師統計」の結果を公表しています。

     この統計からは、全国の医師数は増加しているものの、地域別にみるとその数は都市部に集中しており、地方では医師が不足している状況が読み取れます。人口10万人当たりの医師数は、全国では257人、岐阜保健所管内では165人となっており、羽島市では人口10万人当たりで換算すると123名となります。

     地方の公立・公的病院では医師の確保が大きな課題となっています。羽島市民病院は、当院の役割である医療ニーズに応じた人員は確保しています。

     

    具体的な取り組み

     羽島市と羽島市民病院では、毎年の試験採用や民間事業者への斡旋依頼のほか、岐阜大学医学部の各医局を訪問し、医師派遣を要請しています。

     また、岐阜連携都市圏(近隣5市3町による広域連携)の事業の一環として、岐阜市民病院(岐阜市)との医療連携、松波総合病院(笠松町)から医師を派遣していただくなどの取り組みも進めています。