2022年11月01日

    進む少子化と世界の人口

     9月に発表された人口動態統計によると、我が国の2021年出生数は81万1622人でした。この出生数は、同統計調査が始まった1899年以降、最少の記録となりました。15歳から49歳までの女性の年齢別出生率を合計した「合計特殊出生率」は1.30となり、2015年以降、低下が続いています。

     出生数が下がる要因は、若い世代に子どもを持ちたいという意欲が減退していることが挙げられます。前述の合計特殊出生率が1.5未満になると「超少子化」とされます。1.3未満は、さらに深刻な区分に位置づけられます。

     我が国の合計特殊出生率は、終戦直後は4を超えていました。1947年から49年生まれの「団塊世代」が20代後半になった1975年に2を割り込み、以降出生率は低下が続きました。95年には1.5を下回り、2005年には過去最低の1.26を記録。近年は1.3台で推移しています。

     人口を維持するには、2.06から07の合計特殊出生率が必要だとされています。私が以前から、人口問題に関するお話をする際には、2.1前後の出生率が必要だと申し上げてきたのは、この人口推計論に基づくものです。国が数年前に提唱してきた1.8の合計特殊出生率では、その時点から人口維持は困難だったのです。

     先進国を中心に、世界でも人口は減少傾向にあります。韓国では、2021年の合計特殊出生率が0.81となり、世界最低を記録しました。手厚い出産推奨を行っても、出生数の低下に歯止めがかからない状況に陥っています。20歳から39歳の女性人口を、65歳以上の人口で割った数値が0.5を下回る「消滅危険地域」は、韓国の228の市郡区数の半数近くに上っています。

     我が国や韓国、一人っ子政策を転換した中国のように、出生率が低下するアジア諸国には、共通点があります。家族のあり方や職業に対する考え方等で、保守的な社会通念が根強く残っているのです。さらに結婚や出産に対する価値観や、子育て費用の増加等が、出生率の低下を加速させていると考えられます。

     その一方、人口膨張が続くインドは、一部の州での「二人っ子」法案の導入や、子どもが二人以下の世帯に対する優遇策が検討されています。国連はインドの人口が2023年には中国を抜いて世界最多になるとの予測を公表しています。人口増加に見合う食料確保や雇用機会の創出等、早急の整備が行き届かないインドにとっては、人口増加は深刻な危機となるのです。インドの人口は、2050年には17億人近くになるとも予測され、世界規模での整序ある均衡社会の創出が急務となっています。