2022年10月01日

    世界見据えた金融政策求む

    内閣府は7月下旬、2022年度の実質成長率(GDP)の年央試算が2.0%になると、経済財政諮問会議で報告。1月に閣議決定した3.2%の見通しを、大幅に下方修正しました。この試算について内閣府は、次のとおりポイントをまとめています。

    22年度は、海外経済の減速等により外需が押し下げ要因となる一方、コロナ禍からのサービス消費の回復が見込まれること等により、GDP成長率は実質で2.0%程度、名目で2.1%程度と見込まれる。

    23年度は、コロナ禍からの回復ペースが巡航速度に戻る中で、消費と投資が着実に増加していくことにより、GDP成長率は実質で1.1%程度、名目で2.2%程度と見込まれる。

    同会議では、22年度の物価上昇率の大幅な上方修正も報告されました。1月試算における0.9%の上昇から、1.7ポイント増の2.6%と見込まれました。

    一方、GDPの2割程度を占める設備投資は、1月試算の5.1%プラスから、2.2%の伸びに下振れしました。ロシアのウクライナ侵攻や、中国の徹底したゼロコロナ対策により、我が国だけでなく世界経済が迷走。先の見通せない資源価格の動向等により、サプライチェーンの混乱が収まる気配がありません。

    さらに、GDPの半分以上を占める個人消費の伸びも、1月見込みから0.4ポイント減の3.6%に修正。輸出の伸びについても、5.5%から2.5%と大幅修正されました。

    以上を合算すると、22年度GDPは、548兆円になります。コロナ禍以前のピークであった18年度の554兆円に届かせるには、前述した23年度の1.1%成長が必要となります。

    ロシアの侵攻に端を発したエネルギー資源や食料の供給不足は、世界的なインフレを巻き起こしました。アメリカやユーロ圏では7月の消費者物価は8%以上に上昇。イギリスにおいては、10%を超える事態に陥っています。我が国でも、2.4%の上昇を記録しており、増税時を除くと14年ぶりの高インフレとなっています。

    アメリカでは、気候変動対策や納税割合の低い大企業に対し、課税強化を盛り込んだ法律を成立させています。その一方、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長のこれまでの利上げを主とした金融政策が、功を奏するかについては予断を許しません。

    我が国においても、これ以上の長期金利の抑制は、金融市場の機能低下や不採算企業の延命につながり、経済活動への悪影響を及ぼす恐れがあると思います。経済環境の激変に即応し、物価の安定に寄与する金融対策の早急な構築が望まれます。