2023年07月01日

    時代に即した地域医療を確保

     人口減少と高齢化の急速な進行は、地域医療確保に深刻な影響を及ぼすと思われます。

     国は2014年、団塊の世代が75歳以上となる2025年を見据え「地域医療構想」の策定に着手しました。構想策定に際しては、高齢者が増加する地域や、高齢者と若年層が同時に減少する地域等を把握。それぞれの地域で、効率的な医療の提供を実現できる体制づくりを求めることとされていました。

     2019年9月、厚生労働省は地域医療構想に関するワーキンググループを開き、全国1455の公立病院(自治体病院)と公的病院の分析結果を公表。抜本的な再編統合の再検証が必要な病院として、全体の3割に当たる424病院名を明らかにしました。岐阜県内では、羽島市民病院を含めて9医療機関が対象となりました。

     私はこの発表を受け、全国市長会による地域医療確保対策会議のメンバーに加入。再編統合の根拠となったデータを質すとともに、自治体の地域特性による公立病院の必要性等を強く厚生労働省に訴えてまいりました。同会議からは、全国市長会として国の方針撤回に向けた要望書を提出したところです。

     424病院リストについては、近隣病院との所要時間に関する算定方式や、調査時点での入力誤り等が判明。新型コロナウイルス感染症の拡大も加わり「改めて整理する」として、期間延長となりました。その後、羽島市民病院の対応方針の再検証結果は認められました。この背景には、羽島市民病院をはじめとした大半の公立病院が、コロナ感染症病床を設けて治療に専念したことがあると思います。

     少子高齢化が進むと、医療ニーズが大きく変わります。人口減少に伴い、集中的な治療を必要とする「急性期」の患者さんは減ります。その一方、高齢者増による在宅復帰を目指す、リハビリ治療を必要と

    する「回復期」の患者さんが増加します。

     国の推計によれば、2025年時点で回復期病床は37.5万床が必要です。しかし、22年時点(速報値)では53%の19.9万床しかありません。半面、急性期病床は22年時点(速報値)で53.4万床あり、25年には75%に当たる40.1万床まで減らさなければなりません。

     羽島市民病院は国の方針に先駆け、急性期病床の減少と回復期病床の増設をすでに実践。患者さんのニーズや時代の要請に合った、公立病院としての役割を果たす運営を進めています。そのおかげで、岐阜市民病院や隣接の大型民間病院との連携も実施でき、円滑な高度急性期等の患者さん対応を図っています。

     近隣や県内の病院では、医療従事者の退職により、厳しい運営を余儀なくされているところもあります。羽島市民病院では、診療体制を維持しています。今後は、岐阜県地域医療構想を受け、地域の診療所との連携もより一層図り、回復期機能を併せもった二次救急病院としての役割を果たしてまいります。